チョン・ジェヨン、イ・ジョンホ監督 インタビュー 映画『さまよう刃』

この夏、怒涛のように韓国映画が公開され、まさに第二次韓流ブーム到来と言っても過言ではない。ブームとは言ってもアイドル映画のようなものではなく、公開作品は韓国が得意とする復讐やサスペンスものが多い。どの作品も実力派俳優を起用し、見ごたえが期待できます。その中でも、日本で150万部を超えるベストセラーとなった東野圭吾の同名小説を映画化した『さまよう刃』(9/6(土)公開中)に注目が集まっています。

『さまよう刃』の9/6(土)公開を記念して主演のチョン・ジェヨン、イ・ジョンホ監督が来日!アジアンハナではインタビューをさせていただきましたのでお届けします。

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~本作が日本で上映されることになった感想をお聞かせください。

チョン・ジェヨン:とても光栄です。この映画は日本の小説が原作ですし、日本でも映画化されたと聞いています。韓国で作られた『さまよう刃』を、日本の皆さんが、どのような反応をみせるか、とても気になるし、心配でもあります。でもワクワクしています。

イ・ジョンホ監督:私は以前から原作者の東野圭吾さんのファンでした。東野さんの小説を映画化でき、さらに日本で公開されるということは緊張と同時に楽しみでもあります。この小説を初めて読んだときは、韓国人としても、とても情緒が伝わってきましたし、慟哭し、共感しました。この作品のテーマには日本でも韓国でも同じように感じる普遍的な情緒というものが、きっとあるのではないかと思っています。

~作品を演出、演じるにあたって、自分の中で課題だったことは何ですか?

イ・ジョンホ監督:一番難しいと思ったことは、この原作を映画化すると提案されたときに、内容が青少年犯罪を扱っているということでした。それを映画化しなくてはいけないというところで大きなプレッシャーを感じました。実際に撮影に入ってからも、あらゆる場面で、非常に慎重に考える必要があったので、全てのシーンにおいてかなり悩みながら慎重に選択をしながら撮影をしていきました。“青少年犯罪に対する法律が間違っているんだ!”ということを前面に打ち出すのではなく、罪を犯していても悪魔のような青少年には描かないようにしようと思いました。これを観た人たちが、この問題をどうしていったらいいのかと悩むことができるトーンを維持していこうと心がけ撮影に臨みました。

チョン・ジェヨン:父親としての心情をどう理解して演じていくかというところが一番の課題でしたね。セリフが多いわけでもないのですが、その時々の場面においてどんな心境なんだろうか、どういうふうに歩くのが正解なのか、どう動くのがいいのかと悩みました。父親としての心情を本当に理解していくことが、思っていた以上に難しいなあと感じながら演じていました。

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~特にこだわったシーンやお気に入りのシーンを教えてください。

チョン・ジェヨン:どのシーンも撮影するのは難しいものでした。一番大変だったのはラストシーンですね。少年と向き合うシーンです。カンヌンという駅の周辺で撮影したのですが、人も多く混乱の中の撮影でしたが一番印象に残っています。

イ・ジョンホ監督:この映画を制作するのに3年半くらい準備しました。私が特にこだわって印象に残っているシーンは2つあります。まず1つは、父親のサンヒョンが、雪原の中で娘の魂と対話しているところです。自分の死を意識しているのか、復讐の目的さえ見失いそうになっている・・・。そして娘に謝罪するシーンです。チョン・ジェヨンさんもとてもいい演技を見せてくださり、想像以上に良いシーンを撮ることができました。2つめは、私もラストです。そのシーンがこの映画のテーマの全てを表現しているのではないかと思います。あの場面のチョン・ジェヨンさんの顔に全てが表れているのではないか。あの時の表情がとても良くて今でも時々見るくらいです。

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~チョン・ジェヨンさんからみてイ・ジョンホ監督はどんな監督さんですか?また監督からみてチョン・ジェヨンはどんな俳優ですか?

チョン・ジェヨン:監督は今回が2本目の興行映画になりますが、前作の『ベストセラー』という作品もとても面白く観させていただきました。実際にお会いしたのは本作が初めてですが、監督にしておくにはもったいないくらい、とてもハンサムで背も高くて(笑)。韓国の(監督の中で)3本の指に入るんじゃないかと思うほどのルックスと実力を持ち合わせた監督です。僕は、監督よりハンサムじゃないから、キャスティングされたんじゃないかと思いますよ(笑)。

イ・ジョンホ監督:いやいや、チョン・ジェヨンさんは韓国ではとってもハンサムな俳優さんですよ。千の顔を持つ俳優と言われています。これまでも数々の作品に出演されていますが、独自のポジションを確立されています。真剣でシリアスな表現からコミカルな表現までやってのけられる俳優はそう多くはいません。そういった少数の俳優の中の一人であり、演技においては100%の信頼をおいていたので、何の心配もありませんでした。当初から本作のシナリオを気に入ってくれて、今日初めて話しますが、彼はとても勇敢な方だなと思います。こんなハードな素材の作品で、真の人間の重い感情を表現しなくてはいけない役を引き受けてくださって、とても勇気があると思いますし、社会を見つめるしっかりとした姿勢がある方です。初めて会った時も、『自分が出ている部分をたくさんカットしても構わない。社会に投げかけるべき内容の部分はしっかり出してほしい』と言ってくださるほどでした。

チョン・ジェヨン:普段はもう少しマシなんですけどね。昨日はちょっとお酒を飲んじゃって・・・(笑)。

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~韓国映画で“復讐”というジャンルでいうと『悪魔を見た』や『アジョシ』などの作品がありますが、今回の作品を演じたり演出する上で参考にすることはありましたか?

チョン・ジェヨン:特に研究や分析はしていませんが、この映画に臨むにあたって情緒面において参考になる作品はないかと監督にうかがったところ、『息子』という作品を教えていただき感銘深く観ました。もちろん、この作品も“復讐”という素材が入りますが、『オールドボーイ』や『悪魔を見た』というジャンルのものとは少し要素が違うと思います。

イ・ジョンホ監督:私も他の“復讐”を扱った作品を意識することはありませんでしたね。大きな意思が働いて復讐に臨むのではなく、たまたま犯人の男の子が発した言葉、その状況に置かれた父親の衝動的な行動が結果的に“復讐”という形にはなりますが、他の復讐的ジャンルのものとは違いますね。

~共演者のイ・ソンミンさんをについて、また、撮影中のエピソードを教えてください。

チョン・ジェヨン:僕は撮影中に、監督に叱られたことがありました。撮影のときは真冬で本当に寒かったんです。あまりに寒くて衣装チームの人と相談して一枚多く着て現場に出たんです。ところが、“急に体が分厚くなりましたね”と監督にすぐに気がつかれてしまいました。仕方なく元に戻して撮影に臨みました。しかし、監督は重ね着をして温かくして撮影しているのに…。

イ・ジョンホ監督:刑事役のイ・ソンミンさんには内緒で、に10代の俳優らに“刑事に対してもっと生意気に演技するように”と、ディレクションを与えてみたんですよ。あまりにも生意気な彼らの態度に、何も聞いていなかったイ・ソンミンさんは、おもわず胸ぐらを掴んで殴ってしまいそうな場面がありました。

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~その場面は実際に映画の中で使われているのですか?

イ・ジョンホ監督:映画では実際にはそのシーンが使われなかったたのですが、次のシーンではその感情がそのまま残りいいシーンが撮れました(笑)。また、チョン・ジェヨンさんは10代の俳優たちと争うシーンがあったのですが、彼らは演技経験が浅く、蹴るフリをする加減がわかず、チョン・ジェヨンさんを本当に蹴ってしまうんです。ジェヨンさんも驚いて声をあげてしまう場面もあったんですよ(笑)。

チョン・ジェヨン:私たち俳優にとって、とても頭にきたエピソードですよね(笑)。せっかく苦労して撮影したのに、本編ではカットされてますから(笑)。

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~若い俳優さんたちとは強烈なシーンばかりでした。仲良く撮影できましたか?

イ・ジョンホ監督:もちろんですよ。10代の子たちなので、僕たちは時間も守って、しっかり保護しながら撮影にあたりました。撮影では、演技上、生意気で不良の学生でしたが、実際には本当にいい子たちでした。何回もオーディションを経て選ばれた人たちが演じています。彼らの多くは演技の経験がない子たちなんですよ。

映画の雰囲気とは真逆のチョン・ジェヨン。背が高くまるで俳優のようなイ・ジョンホ監督に驚きながらインタビューでしたが、インタビューが終わり、撮影の様子や作品に対する思いが聞くことができ改めて、この作品がたくさんの方にみていただきたいと思いました。

父親は、たった一人の娘を亡くした被害者になり、そして殺人犯となったー
『オールド・ボーイ』『悪魔を見た』を遥かに凌駕する、戦慄の復讐劇!!
映画『さまよう刃』 
ミステリー小説の巨匠・東野圭吾による150万部突破の大ベストセラーであり、最大の問題作「さまよう刃」が、実力派キャストを迎え韓国クライム・サスペンスとして映画化!
この作品をさらに見ごたえのある本格サスペンス映画にしたのが韓国を代表する演技派俳優の豪華共演!娘を殺され、悲しみと苦悩、怒りの果てに少年たちに復讐する父親に“千の顔を持つ男”チョン・ジェヨン。そして、加害者保護の「少年法」に疑問を感じ悩み葛藤する刑事を演技派俳優イ・ソンミンが熱演。今年4月に韓国で封切り、大ヒットを記録。
原作をより深く掘り下げ、社会の普遍的な矛盾点を浮き彫りにし、怒り、悲しみ、空しさだけではなく、あなたの胸に重い何かを残す重厚な人間ドラマに仕上がっている。

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<ストーリー>
最愛の娘を殺した少年に自らの手で裁きを下そうとする父親、それを阻止しなければならない警察官。父親の復讐は“正義”か“悪”か?そして、待ち受ける衝撃的な結末とは?
町内の廃墟と化した銭湯で、冷たくなった死体で発見された女子中学生スジン。 父親のサンヒョンは妻を亡くしてから男手ひとつでスジンを育ててきた。一人娘の死を目の前に、喪失感でただただ茫然とする。そんなある日、サンヒョンに犯人の情報が書かれた匿名のメールが届く。そこに書かれている住所を訪ねると、少年たちに暴行され死にゆく娘スジンの動画を見て笑うチョルヨンを目撃する。一瞬、理性を失い誘発的にチョルヨンを殺してしまうサンヒョンは、また別の共犯者の存在を知り犯人を捜そうとする。一方、スジンの殺人事件の担当刑事オッグァンはチョルヨンの殺害現場を見てサンヒョンが犯人だと見抜き、追跡し始めるのだった。正義とは何か?誰が犯人を裁くのか?世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎えるー。

原作:「さまよう刃」東野圭吾(朝日新聞出版)
監督・脚本:イ・ジョンホ 撮影:キム・テギョン 音楽:キム・ホンジプ
出演:チョン・ジェヨン、イ・ソンミン、ソ・ジュニョン、イ・ジュスン、イ・スビン
2014年/韓国/韓国語/122分/原題:방황하는 칼날/配給:CJ Entertainment Japan
(C)2014 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
◆公式サイト: http://samayouyaiba.ne

9月6日(土)から角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷にてロードショー中!

 

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