チェン・ボーリン インタビュー 映 画『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』を語る

濃いめのグレージュの革ジャンにショートブーツという秋らしい装いで姿を見せたチェン・ボーリン。数日前から『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』のプロモーションで忙しくしている彼が横浜での舞台挨拶を前にインタビューに答えてくれました。撮影からすでに3年が経った今でも、当時の気持ちを克明に深く語ってくれた彼の思いをたっぷりとお届けします。(※ストーリーについてかなり詳しく触れていますので、ご注意ください)

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 ――ボーリンさんが演じたディン・ボーは、ご自身とは育った環境が全く違う大陸の若者でした。
 
そうですね。ただ、脚本にかなりしっかりとキャラクターが描かれていたので、イメージは掴めました。また、役作りのため、1ヶ月ぐらい前から現地入りし、地元の生活環境や色々なことに馴染むようにしました。実は父親役を演じたのは本作のプロデューサーであるファン・リーさんでしたので、父子関係をどのように表現するか、よく話し合って撮影に臨みました。
 
――ディン・ボーのキャラクターをボーリンさん自身はどう捉えていましたか?
 
彼は違法なバイクタクシーの仕事でお金を稼ぎ、家に対して失望し、愛に対しても自分の気持ちを表現する勇気の無い青春期の迷いを抱えている青年。ただ、お金の有る無しにかかわらず、家庭環境に関係なく、人は誰でも人生に迷うときがあるものじゃないでしょうか。
 
――登場人物たちはそれぞれに心の痛みを抱えながらも、一緒にいることで互いを癒し合っていました。ボーリンさんご自身は心の悩み、痛みとどう向き合っていますか?
 
僕は明るい性格ですし、本当に悩んでいることは口には出さないタイプ。でも、友達と一緒にいると楽しいので、友達と楽しいことをやっているうちに苦しみや悩みが癒されていくような気がします。ただ、本当の苦しみは友達と分け合うことはなく、自分で解決します。
 
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――劇中でディン・ボーが「男は多くのものを手に入れてこそ、初めて好きな女を手にすることができると思ったが、多くのものが何かわからなかった」と話しますが、ボーリンさんにとって、それはなんだと思いますか?
 
それは状況によりますよね。ただ、男が多くのものを持っていなければいけないと思ったり、こういう発言をしたりするのは、彼女のことを本当に大事にしたいからだと思います。あ、ちょっと待って。考えます。うーん、多くのものって何だろう(暫し沈黙)。若い頃はそんなことは考えないと思いますが、年齢とともに男としてこの年齢だったら、当然持っているはずのものをまだ手にしていないと思う。この繰り返しだったのかな。そんなことはあまり考えない方がいいのかもしれないですね。ああ、とても矛盾した答えだ(笑)。僕自身はいつも憧れと夢を持ち続け、それに向かっていく、と解釈しています。
 
――貨物列車に乗っているシーンでは周りの風景がとても綺麗でしたね。
 
はい、本当に美しいところで、あんなにも美しい風景は見たことがなかったので、とてもいい経験でした。それに普通、人が屋根の無い貨車に乗り、真っ暗なトンネルを抜け、パーっと世界が広がるという体験はできないですよね。あれは本当に素晴らしかった!
 
――線路でのシーンは怖くなかったですか?
 
実際の線路で撮影しましたが、汽車の音は聞こえました。すぐに避けられましたので大丈夫でした。
 
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――今作の結末について、ボーリンさんはどう考えていますか?
 
何通りにも考えられる1つに絞れない開放的な結末になっていますよね。いろいろな可能性があると思います。シルビア・チャンさん演じるチャン・ユエチンはやっと自分の出口を見つけた、言ってみれば「解脱」したようなもの。これはディン・ボーの考えですが、彼女の姿が見えなくなりとても残念だったけど、彼女のためにはよかったと思ってあげたんじゃないかな。だから、彼女のことは見つけ出したいけれど、見つけられない方がいいんだと思います。今日は深く突っ込んでくるね~(笑)
 
――エンディングで再び貨物列車に乗り込んだあのときの気持ち、涙の意味は?
 
チャン・ユエチンにとってはよかったという思いとは別にもう一つの思いがあります。姿が見えなくなった=飛び降りたのではない。飛び降りたか否かは映画としては語っていないのです。ですが、3人の若者にとってユエチンはまるで母親のようでした。親との関係もよくない、家庭環境に恵まれない3人にとって、息子を亡くし、悲しみの淵にあるユエチンに対して、母親のような感情を持っていたと思うんです。だから、あの帰り道に泣いたのは、自分たちとユエチンとのふれあい、過去の過ぎた日々を思い出し、懐かしさと共にこみ上げてくるものがあったからだと思います。
 
――今作はリー・ユー監督が生きる目的について表現したかったものとお聞きしていますが、ボーリンさんにとって生きる目的とは?
 
人生は旅路のようなもの。生きていくことは簡単なことではなく、毎日積み重ねた経験から学んでいくのだと思う。だから、毎日いろんなことに出会い、感動し、生きていく。それが人生の目的だと思います。
 
cbIMG_4932.jpg ――ディン・ポーはキレやすい一面もありましたが、ボーリンさんを拝見すると、とても落ち着いた方にお見受けします。
 
キレても意味ないので(笑)。一番恐ろしいのは、キレることよりもその人を無視すること、それとへつらうこと。僕は体力がないので(笑)、筋トレとかやってませんので、身体よりも頭で語るタイプなんです。
 
――今回、久しぶりの来日ですが日本のファンと会っていかがですか?
 
こうやって観客に直接触れ合える機会ができて嬉しい。東京での舞台挨拶、ファンミーティングと皆さんが僕に会って喜んでくれているのを見て嬉しく思います。単純に喜んじゃうんだ。
 
――急遽、日程を早めて来日して下さいましたね。
 
上手い具合に台湾での仕事の予定と合ったので、これは(日本公開)初日に行かなきゃ!と思い、来ました。横浜は3回目でしたが、前回はもう5年前くらい。中華街も随分変わりましたね。台湾では見たことのない新しい食べ物もあるし(笑)。台湾と日本では味が違うけど、両方とも美味しいね。
 
――今日はありがとうございました。
 
ありがとうございました。
 
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<映画「ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅」作品紹介>
大地震が起こった四川省で息子を亡くし孤独に暮らす元京劇女優ユエチン(シルヴィア・チャン)が自宅の空き室を貸すことにした。そこに3人の若者が入居することになり、生活習慣や価値観の違いから衝突しながらも次第にお互い理解を深めていくが、ユエチンは自殺しようとし3人に助けられる。ユチエンの深い悲しみを知った3人は四川省の観音山にある寺へ連れていく。四川大地震で崩壊した仏像の修復作業を一緒にしながら、心が安らぎで満たされていくが…。
 
2010年/中国/109分/監督・脚本:リー・ユー/キャスト:シルビア・チャン、ファン・ビンビン、チェン・ボーリン、フェイ・ロン/配給:オリオフィルムズ、キノ・キネマ
(C) LAUREL FILMS
 
◆チェン・ボーリン 日本オフィシャルサイト
 
◆『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』公式サイト
 

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